ハマモト経営の指針集 『中庸』より

参考図書『中庸』宇野哲人全訳注 講談社学術文庫
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「上に居て驕らず、下と為って倍かず」

読み方「かみに いて おごらず、しもと なって そむかず」

(意味)上に位置しているときは驕り高ぶらず、下に位置しているときは背信することが無い。

→ 徳の高い者は、上に居ても下に居ても礼儀をわきまえている。

地位の上下で変わらない。

自分が置かれた条件に左右されず、自分の内面の光を外に向かって輝かせる。


「国道あれば、その言もって興るに足り、国道なければ、その黙もって容れらるるに足る。」

読み方「くに みち あれば、その げん もって おこるに たり、くに みち なければ、そのもく もって いれらるるに たる」

(意味)国に広く道徳が行き渡っていれば、君子の言葉は聴かれ高い位に上り、行き渡っていなければ、発言せずに黙っておれば害を受けることがない。

→ 徳の高い者は、環境に対応して動く。

よって、どんな環境下でも、存続できる。

企業ではトップがそのように環境をよく見極めて対応すれば、存続し発展できる。


「上なる者は善なりと雖も徴なし。徴なければ信ぜず。信ぜざれば民従わず。」

読み方「かみなるものは ぜんなりと いえども ちょうなし。ちょうなければ しんぜず。しんぜざればたみ したがわず」

(意味)上代の夏殷の礼は善だったけれども時が合っていない。時が合わねば民は疑って信ぜず、信じなければ民は従わないのである。

→ 善いことでも、タイミングが合わなければ受け入れられない。

今の時代に古めかしいものでは、大衆はついてこない。

どんなに善いことも受け入れられなければ、広がらないのである。


「下なる者は善なりと雖も尊からず。尊からざれば信ぜず。信ぜざれば民従わず。」

読み方「しもなる ものは ぜんなりと いえども たっとからず。たっとからざればしんぜず。しんぜざれば たみ したがわず」

(意味)徳があって下位にいる者は善だといっても位が尊敬に値しない。位が低くて尊敬できなければ民は疑って信ぜず、信じなければ民は従わないのである。

→ どんなに徳があり優秀でも、地位が低いと人は疑う。

地位というのは、大衆にとって重要な基準である。

自分の理想を実現しようとすれば、出世競争を勝ち上がっていくことも必要なのだ。


「君子動いて世々天下の道と為り、行って世々天下の法と為り、言って世々天下の則と為る。」

読み方「くんし うごいて よよてんかの みちと なり、おこなって よよてんかのほうと なり、いって よよてんかの のりと なる」

(意味)徳の高い者が動いてこの世の天下の道となり、行いはおきてとなり、言葉は模範となる。

→ 徳が備わった人物がトップにいてこそ、正しい道ができる。

制度やルールが根本ではない。

トップが真のリーダーであるか否かが根本である。


「これに遠ければ則ち望むあり。」

読み方「これに とおければ すなわち のぞむ あり」

(意味)徳の高い者に遠ければ、人民は遠くから望んで思慕するのである。

→ 徳が備わった人物というのは、離れている場合、あこがれの対象となる。

もし社員が30人を超えている場合、トップは一般社員のあこがれの対象でなければならない。

直接話ができなくても、社員はトップの一挙手一投足を見つめている状態にあるか。


「これに近ければ則ち厭わず。」

読み方「これに ちかければ すなわち いとわず」

(意味)徳の高い者に近ければ、人民はいとわずに愛して親しむ。

→ 徳が備わった人物というのは、近くにいる場合、よく話しかけられる。

もし社員が30人未満の場合、徳の高いトップは社員から相談されたり、質問されたりする。

社員は少しでもトップと話をして、その優れた点を吸収したいと思うものである。


「君子の道は淡にして厭わず、簡にして文、温にして理なり。」

読み方「くんしの みちは たんにして いとわず、かんにして ぶん、おんにしてりなり」

(意味)徳の高い者の道は、あっさりしていやがられず、シンプルでいろどりあり、温かくてしかもすじみちあり。

→ 濃厚なもの、複雑なもの、傲慢な感じのものは一時的に人をひきつける。

しかし、長期的に見ると人は離れていく。

淡々とした中にこそ、本物の味わいがある。


「君子内に省みて疚しからず、志に悪むなし。」

読み方「くんし うちに かえりみて やましからず、こころざしに にくむ なし」

(意味)徳の高い者は、反省した場合に疚しいことは無く、心に恥じることは無い。

→ 後で考えてやましく思うことや、人として恥ずかしいことをしないようにする。

これには、今日が人生最後の日でも悔いの無いように生きるという考え方が必要だ。

一瞬一瞬を、誠実を刻むように生きること。まさに武士道である。


「君子の及ぶ可からざる所の者は、それ唯人の見ざる所か。」

読み方「くんしの およぶべからざる ところの ものは、それ ただ ひとの みざるところか」

(意味)徳の高い者の近づきがたい点は、誰も見ていない所でも慎んでいる点であろう。

→ 誰も見ていない所でこそ、努力を怠らない。

人の評価ばかり気にしていると、誰も見ていなければサボったり悪事を働いたりしてしまう。

一人でいるときこそ、自分で自分の真価がわかる。

 



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