ハマモト経営HOME

「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

4.戦争と殺戮編

生き残る者の思考と行動学(2)魯仲連の助言      


一方、斉の方は、楽毅に斉国内の城の
ほとんどを攻め落とされ、
残すはキョと即墨(そくぼく)の二城だけ
となっていた。

その後、燕の昭王が亡くなり、
子の恵(けい)王が即位したが、
恵王は太子の頃から楽毅をこころよく
思っていなかった。

これを知った斉の将軍田単(でんたん)は、
スパイを送り込んで、こう触れ回らせた。

「楽毅は恵王と仲違いしているので、
 斉を伐つことをわざと長引かせ、
 口実にして、国へ帰ろうとしないのだ。

 いま斉が恐れているのは他の将軍が
 やってきて、即墨が打ち破られることだ」

恵王は果たして楽毅を疑い、
別の将軍を送り込み、楽毅を召還した。

殺されると悟った楽毅は帰国せず趙に
逃れた。

こうして田単はとうとう燕を破って、
奪われていた城をすべて奪回したのである。

その後、田単は狄(てき)の地を攻めたが、
三ヵ月たっても勝つことができなかった。

斉の賢人の魯仲連(ろちゅうれん)が
言うには、

「前に将軍が即墨の城を守っておられた
 際には、

 『わが国は亡んでしまい、行くところも
  無い』

 と言われた。

 将軍には決死の覚悟がみなぎっていて、
 士卒には生きて還ろうなどという気持ちは
 無く、皆、涙を振り払い、臂(ひじ)を
 奮って戦いたいと願っていた。

 ところが今の将軍はといえば、
 東には夜(えき)の地に一万戸の俸禄が
 あり、西にはシ水の川のほとりに遊んで
 酒宴をするという楽しみがおありだ。

 沢山の黄金を帯のまわりに着け、シ水と
 ジョウ水の間を馬で駆け回っておられる。

 生きる楽しみばかりあって、
 この戦いで死んでもいいという決心が
 感じられません。

 だから勝てないのです」

これを聞いた田単は、
次の日から勇気をふるって城を巡り、
矢や石が飛んでくるところに立ち、
自分で撥(ばち)をとって攻め太鼓を
打ったので、狄人はようやく降参した。

生きたいと思うのは人間にとって
当たり前である。

しかし、戦いの最中に生きることばかりを
考えると、どうしても攻撃は中途半端に
なってしまう。

上に立つ者の臆病な気持ちは全軍に伝染し、
攻撃力は弱くなる。

かえって危険な状態に軍を陥らせるのだ。

逆に、将軍が死んでもかまわぬ、という
気持ちで士卒を鼓舞すれば、
極めて強力な軍隊となり、
全軍がものすごい勢いで敵に襲い掛かる。

生き残る者とは、

生きたいという逃げる気持ちを捨てた人間

なのである。

→続く「生き残る者の思考と行動学(3)生ける仲達を走らす」
「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

 

 

 

inserted by FC2 system