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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

1.賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ
  「十八史略」に学ぶ意味

変わるものと変わらないもの


歴史から学ぶべき条件とは何か。

それは、過去にも現在にも共通するもの、
長い歴史のなかでも変わらないもの、
である。

その逆の変わってしまうものを示せば、
変わらないものが分かりやすくなるだろう。

変わるものとは、人間の外側にあるものだ
と考えればよい。例えば、武器。

武術の研究家や格闘家は別として、
大昔の武器を研究しても現代を生きる
私たちにはほぼ役立たないだろう。

刀や槍(やり)、弓など、その形状や機能、
殺傷能力、使い方などについて知った
ところで、その知識を活用する場面は
ほとんどない。

たとえ軍事の専門家であっても同様だと
思われる。

なぜならば、現代は、ミサイル、爆弾、
機関銃、ジェット戦闘機、宇宙兵器、
生物兵器などを使って戦う時代であり、
戦争の中身がまったく変わってしまった
からである。

戦場での通信手段は、
昔は旗、幟(のぼり)、鉦(かね)、太鼓、
烽火(のろし)などであり、
込み入った情報は密書をしたためて使者に
託した。

現代では、電話、インターネット、
トランシーバーなどだろうから、
太鼓の種類や叩き方などを知っても仕方が
ない。

では、変わらないものとは何か。
それは人間の内側のものである。

まず、その外見的な特徴であるが、
目が二つ、鼻が一つ、手が二つなどは
変わらない。
また、内臓や筋肉も同じである。
それに、男性と女性がいることも同じ。

つまり、人間の動き方や、
肉体を傷つけられたときの痛み、
肉体から発する欲望などは現代人と
同じであると考えられる。

そして、さらに重要なのが心である。

人に幸福感を得させるのも、
不幸のどん底に陥れるのも、
敵を憎んだり、ライバルに嫉妬したり、
権力奪取を狙ったりさせるのも、
すべては人の心だ。

そしてこれは、大昔の人間も現代人も、
さほど変わっていないのである。

まず、昔も今も「不幸になりたい」と
考えている者はいない。
万人が「幸福になりたい」と考えている。

この幸福の中身は人によって違うが、
それは昔もそうだった。大きく分ければ、

・自分と自分の身内だけが幸福になる
・他人を幸福にすることで自分も幸福になる

の二種類に分かれる。

そして、本当に幸福を手に入れるのは後者の
側であり、前者は最終的には不幸に陥って
しまう。

しかし、「十八史略」に登場する人物の
ほとんどは前者である。
後者は稀有な存在といってもよいだろう。

これを知るだけでも「十八史略」を読む
価値がある。

前者を突き動かすのは欲望だ。
多くの登場人物の幸福は、
権力と結びついたものである。

権力を握れば、富と名誉を得、
人間も支配できる。

これが前者の人々にとっての幸福なのだ。

この考え方からすると、
ライバルは蹴落とすべき存在、
人民は財を搾り取る対象ということになる。

現代でもまったく同じと考えてよい。
おそらく多くの日本人の心の中で、
幸福は金と結びついているはずだ。

金持ちは幸福で貧乏人は不幸という考え方が
根底にある。金さえあれば何でも買えて
幸福になれると思っているのだ。

以前、あるIT長者の
「人の心はお金で買える」
という言葉が物議を醸したことがあったが、
これは共感する人が多いからこそ
大きく取り上げられたのだろう。

さらに、富と共に名声まで得られたら、
このうえもなく幸福であると考えるのが
一般的ではないだろうか。

「○○県の財界で重要な役割を果たし、地域
 経済をリードしている人物と言われたい」

などと考えるのである。

人によっては、本業をほったらかしにして、
地域経済で割り当てられた役職に
のめり込んでしまう。

私はそれで自分の会社を倒産させかけた
社長、実際に倒産させてしまった社長を
知っている。

また、お山の大将として自分の指示どおりに
人間を動かせることに快感を覚える類の人物
は、時折、自分に反抗する者を前にすると、

「俺を誰だと思っているんだ」

と言いたくなるらしい。

すべてを力でねじ伏せるようになると、
言ってもむだだと周囲が認識して何も意見を
言わなくなるので、こういったタイプの人間
には情報が入ってこなくなる。

情報不足は戦略や戦術を決める際の判断を
誤らせることにつながり、組織は崩壊への道
をまっしぐらに進むのである。

このように、昔も今も変わらない、

人の心のあり方が大きく結果に影響する

のだ。

だからこそ、権力、富、名誉などを
追いかけて失敗した者の事例を「十八史略」
で嫌というほど読むことは、自分を失敗から
遠ざけることにつながる。

社長にとってもっとも重要なのは、

心を磨くこと

である。それさえできていれば、
人も業績も必ずついてくるのだ。

→続く人間の本質と考えることは三千年前と同じ」
「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

 

 

 

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