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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

1.賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ
  「十八史略」に学ぶ意味

人間の本質と考えることは

三千年前と同じ


「十八史略」を読むと、
人類は心がほとんど成長していないように
感じる。

今も地球上では戦争がやまない。

一方、ここ数十年、戦争のない日本も一言で
平和な国と片付けることはできないだろう。

毎年、自殺者が三万人前後という現実が
あるからだ。

人は幸福を追いながら、なかなか真の幸福を
手に入れられないのである。

おそらく、昔も今も、

人間の寿命は数十年である

ということが、なかなか学習効果の
上がらない根本にあるのだろう。

どんなに人類の歴史が長くなっても、
どんなに詳細に歴史を記録して反省したと
しても、一人の人間は数十年、長生きしても
百年と少ししか生きることができない。

その数十年の間、赤ん坊から青少年期に
かけては血気盛んで元気いっぱいだが、
さまざまな経験が不足していてものごとは
なかなかうまく行きにくく、肉体から生ずる
欲望も盛んで、本来の進むべき道から他へ
エネルギーをそらしてしまうことも
多々ある。

中年期になると、経験も積んで成功すること
も多くなるが、出費も多くなるので
資金に対する欲が膨らむ。

自分のことで精一杯で他者への思いやりは
薄れてしまいがちとなる。

老年期になって性欲も金欲も減ってきたと
しても、今度は名誉に対する欲が
湧いてくる。

立派な人といわれ、
あごで若者を使いながら成功者としての
人生を送りたくなるのだ。

こういった経験を経て、
ようやく人生を分かりかけた頃に
死を迎えるのである。
 
人間の一生は私欲との戦いである

といっても過言ではない。

私欲に勝った者が勝ち、私欲に負けた者は
亡び去るのが人生なのだ。

ただし、
このようなことは私が言わなくても、
三千年以上も前から分かっていたこと
である。

夏(か)王朝の暴君であった桀(けつ)が
民心の離反を招き、
殷(いん)の湯(とう)王に伐(う)たれた
のも私欲に走って亡びた事例であり、

たとえトップの地位にあっても欲望を
抑えなければ人生を全うできないことを
教えている。

こういった悲劇を繰り返したからこそ、
中国では数々の立派な思想が生まれた。

易経、老子の道徳経、孔子の儒教などを始め
として、春秋戦国(しゅんじゅうせんごく)
時代には諸子百家と呼ばれる多くの思想家が
世に出、互いにあるべき人間の姿を
論じ合ったのだ。

そこまで頑張っても私欲に勝てず、
他人との争いを続けるのが
人間という生き物なのである。

学んでも学んでも私欲に負けることを
繰り返す。

しかし、それでもまたみずからを反省して
私欲に立ち向かわなければ、
成功をつかむことはできない。

人間の一生はそのようにできているのだ。
だからこそ、

人生は死ぬまで勉強

なのである。たとえ九十九歳まで立派な
人生を送っても、百歳になって不祥事を
起こせば、一転、敗北組に入ってしまう。

自分は成功者だと悦に入っていたら、
あっという間に地獄へまっさかさまだ。

棺桶に足を突っ込むまで、
謙虚さを忘れてはならない。

「十八史略」にも、名君といわれながら、
晩年は評価を落としてしまった者が
少なからず出てくる。

そうなってしまったのは、
やはり本人が欲望を抑えられなかったことが
大きな原因だ。

優秀な者も、ちょっと油断したらすぐに
私欲という魔物にやられてしまう。

そういう意味では、人間の一生は綱渡りの
ようなもので、一瞬も気が抜けない
厳しいものである。

しかし、実際に最後まで名君として一生を
終えた者もいる。彼らはどうして欲望に
負けなかったのであろうか。

多くの場合、彼らを支えたのは、
周囲の重臣たちであった。

時として厳しい諫言(かんげん)に
苛立ちながらも、最後まで耳を傾けた者は、
大きく身を持ち崩すことがなかったので
ある。つまり、人間というのは、

他人に支えられて、
ようやく人生を全うできる弱い存在

だといえよう。その弱さを認め、自分が
私欲に負けにくい状況を作った者は
人生の成功者となりやすいのである。

人はたいてい、
自分一人でも最後まで立派にやっていける
ように思っているものだが、
落とし穴に落ちて初めてそうではなかったと
気づく。

落とし穴が深ければ一巻の終わりである。

企業の社長を務めているような、
上の地位にある者ほど、このような過信を
するべきではない。

社長の失敗は全社に影響を及ぼすのである。

諫言してくれる者をなるべく多く抱え、
辛抱して耳を傾け続けることを
自分に課さねばならない。

→続く繰り返されてきた歴史の持つ意味」
「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

 

 

 

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