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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

2.人間の本質と欲望編(基本)

男と女(2)女は魔物?


地位が高くない男と女(蘇秦と身内の女)
でもこうなのである。

これが天子ともなれば、
純粋な愛情で結び合うというのは土台、
無理なのかもしれない。

どんな女でも自分のモノにできる天子は、
権力で自分の好みの女を側に置く。

天子の人柄や顔のよしあしでなく、
その権力に引き寄せられる女は、
自分の欲を実現するために天子の力や、
天子の寵愛を受けているという地位を
利用しようとするのである。

名君であった周の宣(せん)王が崩じ、
その子である幽(ゆう)王が即位した。

幽王は女に惑わされ、
周の国勢を衰えさせることになる。

この話は夏(か)王朝の昔にまで
さかのぼらねばならない。

夏の世に二匹の竜が王の庭に現れて
言うには、

「私たちは褒(ほう)の国の君主である」

と。

夏王はこれを占わせ、お告げに従って
竜の吐いた泡を箱にしまった。

その後、夏、殷を経て周になっても、
開いてみる者は誰もいなかった。

そして、厲(れい)王(宣王の前の王)の
ときに初めてあけたところ、
泡が一匹のとかげとなった。

宮中の少女がこのとかげにぶつかって
妊娠し、女の子を生んだ。

しかし、不吉に感じてこの子を捨てた。

宣王のとき、童謡がはやった。

「山桑(やまぐわ)の(木で作った)弓、
 荻(おぎ)(で作った)の
 えびら(矢を入れる道具)が、
 まことに周の国を亡ぼすだろう」

というものだ。

たまたま、この二つを売り歩く者がいた。

宣王がこの男を捕らえさせようとしたが、
男は逃走した。

男は途中で捨てられた女の赤子を見つけ、
夜に泣いているのを哀れに思って拾い
上げ、褒の国に逃げたのである。

幽王の時代になって、
褒の君が王に咎(とが)めを受けることが
あり、その償いで、美しい娘に成長して
いた先の女を王に献上した。

これを褒ジ(ほうじ)と名づけて、
王は溺愛した。

ところが褒ジは笑うことを好まない。

王は、なんとか褒ジを笑わせようと
さまざまな手を使ってみたけれども
にこりともしない。

かねてより、王は諸侯と、

「もしも外敵が攻めてきたら
 烽火(のろし)を挙げるから、
 兵を集めてすぐに来援せよ」

という取り決めを交わしていた。

あるとき、その合図の烽火が理由もなく
挙がってしまった。

諸侯は約束どおり、
ことごとくやってきたが、
敵の姿は無い。

これを見て褒ジはケラケラと笑った。

王はますます褒ジを愛するようになり、
申(しん)皇后と太子の宜臼(ぎきゅう)を
廃して、褒ジを皇后となし、
その子伯服(はくふく)を太子にした。

宜臼は母の生国である申に逃げた。

幽王はこれを殺そうとしたが捕まえることが
できなかったので、申を伐(う)った。

申の君は異民族の犬戎(けんじゅう)を
招いて幽王を攻めた。

そこで王は烽火を挙げて兵を集めようと
したが、諸侯は懲りているので誰も
来なかった。

そしてとうとう、王は驪(り)山という山の
ふもとで犬戎に殺されてしまった。

諸侯は宜臼を立てて王とした。
これを平王という。

以来、犬戎にしばしば迫られるようになり、
都を東都の洛陽(らくよう)に移した。

この頃から周王朝はしだいに衰えていく。

王が国を忘れ、女にのめり込んだことで、
このような結果を招いたのである。

褒ジがもともと、褒の国の君主の霊が
化けたものとして描かれているのは、
男にとって女が魔物であることを暗に示し、
注意を促したかったのかもしれない。

→続く男と女(3)玄宗と楊貴妃」
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