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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

5.富と繁栄編

 泣いて馬謖を斬る(4)    繆公の超法規的措置      


春秋時代、秦(しん)の繆(ぼく)公は、
晋(しん)と戦った際、
包囲されて窮地に陥ったが、
岐(き)山のふもとに、
かつて繆公の馬を殺して食ったことのある
三百人の民衆がいて、
突進して晋軍に襲いかかった。

そのため晋は囲みを解き、繆公は危険を
脱して秦へ無事に帰ることができた。

この三百人については、
かつてこういうことがあった。

繆公の大事な良馬が逃げ出したことがある。

これを百姓たちが皆でつかまえて食って
しまったのだ。

役人が追いかけてひっ捕らえ、
法にもとづいて処罰しようとしたとき、
繆公はこう言った。

「良馬を食って酒を飲まなければ
 体をこわすぞ」

繆公は、皆に酒をふるまい、
その罪を許したのだ。

繆公が晋を攻めると聞いて、
彼らはすすんで従軍を志願し、
敵の鋒先(ほこさき)を押しのけ、
われ先にと死を争って奮戦し、
助けてもらった恩に報いたのである。

これは繆公が自分の主観で
法を曲げてしまったわけであるが、

現代で言えば、

超法規的措置

といったところであろう。

許したのは、
彼らに悪意を感じなかったからか、
三百人がわずかな馬を食ったことで
処罰されるのが忍びなかったのか、
理由ははっきりしないが、
繆公は人間の自然な感情から、
処罰すべきではないと考えたのでは
ないだろうか。

そこで許すだけなら味がないが、
さらに酒をふるまったところが
粋(いき)である。

いっぺんに三百人をファンにし、
いざというときに命を投げ出して
自分を助けてくれる勢力を
作り出したのである。

→続く「泣いて馬謖を斬る(5)文帝の情の政治」
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