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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

2.人間の本質と欲望編(基本)

欲望を制御するものと方法(1)創業と守成


王朝の興亡を眺めて言えることは、
おおむね、王朝を興す人物は優秀で、亡ぼす
人物は愚かである場合が多いということだ。

唐(とう)の太宗(たいそう)は、
あるときお側の者に向かって、

「国家経営の大業を新たに始める創業と、
すでにできあがったものを守って失わぬ
ようにする守成(しゅせい)とでは、
どちらが難しいだろうか」

と尋ねた。

この問いに
重臣の房玄齢(ぼうげんれい)は、

「世が乱れて統一されていない
 状態のときは、多くの英雄どもが各地で
 いっせいに旗を揚げ、
 互いに力を比べあって覇権を握ろうと
 します。
 だから創業の方が困難であります」

と答えた。もう一人の重臣、
魏徴(ぎちょう)は、

「昔からどの帝王も
 艱難辛苦(かんなんしんく)のうちに
 ようやく天下を得て、安逸(あんいつ)を
 むさぼっているときに失っています。
 だから守成の方が困難です」

と答えた。

これに対して太宗は、

「房玄齢は、私と一緒に天下を取り、百の死
 をくぐり抜けて一生を得た者だから、
 創業の難しさを知っている。

 魏徴は私と一緒に天下を治め、常に驕り
 たかぶる気持ちは富貴な暮らしから生じ、
 世の乱れや騒動は物事をゆるがせにする
 ところから起こることを心配しており、
 守成の難しさを知っている。

 だが、創業の困難はすでに過ぎ去った。
 守成の難しさはこれからの問題である。
 諸公と共に心して取り組んでいきたいと
 思う」

と応じている。

創業の苦労を知っている人物は、
自分のなかに起こるさまざまな欲望を
制御することが比較的できやすい。

多くの辛酸(しんさん)を嘗めていると、

「もう二度とあんな思いはしたくない」

と思って、欲望のままに動こうとする自分を
制止するのである。

→続く「欲望を制御するものと方法(2)苦労は買ってでも」
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