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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

1.賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ
  「十八史略」に学ぶ意味

なぜ歴史は繰り返すのか


過去を知ることで、現在、および未来に
発生する問題の解決に役立てること。
これが歴史を学ぶ目的である。

現代の日本を取り巻く
諸問題を列挙してみよう。

・巨額な財政赤字
・経済成長の鈍化
・政治の停滞
・人口の減少
・貧富の差の拡大
・進展の見られない領土問題
・中国など新興国の政治、経済、
 軍事面での脅威 … など

どれも簡単には片付けられないものばかりで
暗澹たる気持ちになってしまうが、
実はこれらは過去に人類が何度も
経験してきた問題でもある。

歴史が繰り返す理由を一言でいうならば、

変わらない人間の欲が
同じ問題を繰り返し発生させる

ことにあるといってよいだろう。

原始時代の人間に、国家などの概念は
無かったはずだ。

人は大自然の前に立ちすくみ、
生きていくだけで必死だった。

一人のボスを中心として集団を作り、
狩猟で食料をとってくる男たちと、
子供を育てたり料理をしたりという
家事を行う女たちが力を合わせて
日々の暮らしを送っていたことだろう。

しかし、そのような生活を続けるなかで、
ボスのなかに巨大な権力を持つ者が現れる。

現代でも、
人が集まれば必ずそのなかにリーダー的な
役割を務める者がいるが、
数名のボスもいれば数十万人の企業の
社長のようなボスもいる。

強い男には多くの女が寄ってくるので、
子供も数多く生まれる。

その一族が一大勢力を作って、
一定の土地を支配するようになるのだ。

そうして、
国のようなものが出来ていくのである。

ボスは、勢いがある間は自分の欲するものを
好きなだけ手に入れられる。

多くの女性を妻とし、財宝を集め、
壮麗な宮殿を建造するなどしていくが、

それは人民からの税金でまかなわれるため、
行き過ぎると国家財政は窮乏していく。

人民の生活は苦しくなり、
経済は不活性となる。

権力者にうまく取り入った者は富み、
そうでない多くの民との間で貧富の差が
拡大する。

ボスが年老いて力に衰えが見られるように
なると後継者争いが起き、
内部抗争が勃発する。

多くの場合、
たいした人物がいないと抗争は長期化し、
政治は停滞することになる。

また、このような集団は、
あちこちにいくつも出来る。そのため、
集団と集団のなわばり争いが発生する。
領土問題だ。

国境付近での小競り合いが全面戦争に
発展すると、多くの若者の命が失われて
人口が急激に減少してしまう。

戦勝国が多くの領地を奪うことになるが、
負けた側も簡単にはあきらめない。

「あの地域はわが国の固有の領土である」

と主張して、いつまでも争いの火種は
くすぶり続けるのである。

そうこうしているうちに、
今までとはまったく異なる考え方や技術を
もった国が興り、
あれよあれよという間に拡大して、
旧来の考え方に留まっていた周辺の国々を
亡ぼし、世界の中心となっていく。

人間の欲望がこうした循環を生むのだ。
欲望さえなければ争いは起きない
はずである。

考えてみれば、この地球上に誰かの
私物などあるわけがない。

人間そのものが自然の一部であるし、
死んだ後に土地や金や財宝をあの世へ
持っていくこともできないのである。

ところが、
生きている間は錯覚してしまう。
地球上のほとんどの人間が、

・自分の国、土地
・自分の富、所有物
・自分が支配する人間

があると錯覚するため、
同じ失敗を犯して亡び去り、
新しい集団がそれに取って代わると
いうように、歴史は繰り返されるのだ。

国家レベルで分かりにくければ、
家族などの小さな単位で考えてみると
よいだろう。

結婚し、子供を生み育て、土地を買い、
家を建てたとする。

妻や夫、子供は自分のものではないにも
かかわらず、相手の自由を制約したり、
頭ごなしに命令したりすることがある。

私物だと思っているからだ。

土地を買ったら隣の家との境界線でもめ、
隣が建て増ししたら日が当たらなくなった
といってまたもめる。

自分の権利を侵害されたと考えるからで
ある。

また、少し儲かったといっては主人が
高級車を購入し、妻は派手なドレスや
宝石類を身にまとうようになれば、
家庭内の財政状況は悪化する。

この家族や宅地などの問題は、
大なり小なり、どこの家でも発生する。

「私有」の概念がある限り、
3千年前でも現代でも発生するのだ。

これを大きくしたのが国家レベルの
内部抗争、領土問題、財政問題なのである。

もし、誰も私有物などないと考えていたら、
この世はまったく違ったものになっている
だろう。

地球上に個別の国家は無くなる。

人種や言葉の違いを超えて、
皆が地球人として、
争いの無い社会で平和に過ごす・・・

しかし、これは現実問題としては
まず不可能である。

この日本でも、飛鳥時代の大化の改新以後、
豪族などによる土地や人民の私的所有・
支配を禁止し、全ての土地・人民を天皇が
公的に所有・支配する体制、
つまり私地私民制から公地公民制への
転換を図ろうとした時期があったようだが、
長続きしなかった。

食糧増産をするのに私有を認めて農民の
やる気向上を図ったこと、
大寺院や豪族が私有地拡大に動いたこと
などが原因と見られているが、
定かではない。

ただ、人間にとって「私有」というものが
大きなモチベーションになっていることは
間違いないのだ。

共産主義国家で経済が発展しにくいのは、
私有を認めていないことが大きい。

中国では鄧小平(とうしょうへい)が
「改革・開放」政策の一環で経済特区を
設置し、一部地域に限って外資の導入を
許可・促進したことが、現在の経済成長の
きっかけとなった。

政治面では社会主義の体制を維持しつつ、
経済面では市場経済を導入するという
「社会主義市場経済」を行うことで、
ようやく中国は発展に向かったのだ。

こうしてみると、

「私有」は必要悪的な存在

のようである。

これがある限り、
人類は永久に良いことも悪いことも
繰り返し続ける存在であると
観念しなければならない。

私たちは、

人類とはそういうものである

と諦観(ていかん)して、
そこから対策を考えるべきである。

→続く「失敗の本質
「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

 

 

 

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