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エピソード集

「孫子の兵法」を駆使したと思われる兵法家のエピソード8

武霊王「軍制改革」


武霊王の「軍制改革」

周囲の反対を押し切って軍制改革に踏み切り、
強国を作り上げた事例。

【登場人物】

趙(ちょう):武霊(ぶれい)王、
       重臣 楼緩(ろうかん)、宰相 肥義(ひぎ)



趙の武霊王は、重臣の楼緩を呼び、相談をもちかけた。

「わが先王である趙襄子(ちょうじょうし)は、
 世の中の変化を見通して南方への進出をはかり、
 地の険しい形を利用して長城を築き防御を固め、
 藺(りん)・郭狼(かくろう)の地を奪い、
 荏(じん)での戦いに林胡(りんこ)族を破った。

 しかしまだ完成していない。

 今、中山(ちゅうざん)国はわが国の中央を突ける
 位置にあり、北には燕(えん)、東には胡(こ)、
 西には林胡(りんこ)族・楼煩(ろうはん)族
 ・秦(しん)・韓(かん)が国境を接している。

 このように危険な状況であるにもかかわらず、
 強い兵力をもった国が味方として存在しているわけ
 でもない。どうすればよいだろうか。

 私はこう思うのだ。

 過去に名をあげた者は皆、従来のやり方を捨てたと
 批判されるものだが、私も従来の服装をやめて、
 遊牧騎馬民族が着ている胡服(こふく)を着用しよう
 と思っている。どうだろうか」

楼緩は賛成した。

しかし、他の臣下たちはことごとく反対した。

王は、側近くに控えていた宰相の肥義(ひぎ)に
こう言った。

「天下に高い業績を上げた者は従来のやり方を捨てたと
 批判され、独自の新しい考え方をもっている者は
 古いやり方を変えたくない抵抗勢力から非難を浴びる
 ものだ。

 私は今、自分自身が胡服を着用し騎射の術を会得して、
 率先垂範によって皆に教えようと思うが、
 世人は私を非難するだろう、どうすればよいだろうか」

肥義は答えた。

「疑っていることは成功せず、名誉も得られないと言います。
 
 すでに王が今までのやり方を変えようと
 お決めになったのなら、
 世人がどう言おうが気になさる必要はありません。

 最高の徳を考える者は俗人の論に同調することなく、
 大事業を成そうとする者は多くの者の意見など聞かない
 ものです。

 かつて、聖人の舜(しゅん)は苗(びょう)族とともに
 彼らの踊りを舞い、聖人の禹(う)は裸国に入ったら
 自分も服を脱ぎました。

 このような行為によって、
 こちらの徳に同化させようと考えたのです。

 つまり愚者は過去の事実の本質さえも理解できず、
 智者は形になっていない物事の将来すら見通すのです。

 ですから王よ、断固やるべきです」

王は、

「私は胡服がいかに役立つか、
 そのすばらしさを確信している。
 ただ天下の人々から笑われることを恐れていたのだ。

 しかし、狂人の楽しみを智者は哀しみ、
 愚者の嘲り笑うことを賢者は注意深く観察する。

 世に、私に従って胡服を着用する者が現れれば、
 その効用は考えられないほど大きい。

 天下の者、皆が私を笑うとも、
 胡の地と中山国はかならずわが領土としてみせる」

武霊王は、このようにして胡服の着用にふみきり、
騎馬戦術を採用した。

その結果、いちじるしく戦闘力を高めたのである。

武霊王は王位を子に譲り、軍事に専念した。
そして自ら軍を率いて、かねて宣言したとおり、
楼煩族を服属させ、中山国を滅ぼして趙に併合した。

武霊王は、自ら推進した改革によって、
国力を高めることに成功したのである。


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