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エピソード集

「孫子の兵法」を駆使したと思われる兵法家のエピソード7

田単「反間の計」&「火牛の計」


田単の「反間の計」&「火牛の計」

反間の計:敵の間者を味方の間者として利用すること。
       二重スパイ。
火牛の計:牛の角に刀の刃を付けて結び、
       尾に葦(あし)を結びつけて点火し、
       驚く牛を敵軍に向けて放つという奇策。

【登場人物】

斉(せい):将軍 田単(でんたん)
燕(えん):名将 楽毅(がっき)



名将楽毅(がっき)率いる燕軍は斉軍を破り、
斉の首都を落として、
2つの都市を除く斉の70余都市を占領した。

残り2つのうちの1つを治めていた田単は、
燕本国で亡くなった王に代わって即位した新しい王と
楽毅の仲が悪いことに着目。

斉に潜り込んでいた燕の間者(スパイ)を捕らえ、
反間、つまり味方の間者として利用することにした。

「楽毅が2都市を攻め落とさないのは
 わざとそうしているのである。

 これを理由に斉に長く滞留して民衆を手懐け、
 斉王となるつもりなのだ」

というウソの情報を燕の新王に流させたのである。

田単の思惑通り、これを聞いた燕の王は楽毅に本国に
帰るよう、使者を送って命じた。

王に殺されようとしていることを悟った楽毅は他国へと亡命。
燕軍は名将楽毅を失った。

田単は楽毅が率いる燕軍と正面きって戦うことを避け、
まずは防御を固めつつ、
楽毅を燕から去らせるための裏工作を行ったのだ。

田単は自軍の内部を固めるための策も講じた。

食事のたびに城内の庭で先祖の祭りを行い、
多数の鳥が食物を求めて城の中に舞い降りるようにし、
敵である燕の将兵が不思議に感じるようになった頃に

「これは神が我々にお告げをしようとしているのだ」

と宣伝した。

さらに、城内の味方住民に対しても、

「もうすぐ神人がきてわが師となる」

と告げた。

あるとき、1人の兵がいたずらで

「それは私であるぞ」

と言って逃げ出したとき、田単は追いかけて連れ戻し、
さもその兵を神とあがめるような仕草をした。

兵は

「これは冗談ですよ。神のような能力は私にはありません」

と言ったのだが、田単は

「おまえは何も話してはならない」

と言いつけ、神に仕立てて、軍の命令を発するごとに必ず

「神の教えである」

と皆にウソをついた。

つまり、斉の側にはまるで神様がついているように、
内外に広めたのである。

そして田単は

「私たち、斉が恐れているのは、
 燕軍が捕虜にした斉の兵士を鼻切りの刑に処して、
 彼らを先頭に出して攻撃してくることである。

 そうすれば斉軍はすぐに敗れるだろう」

という神のお告げを燕軍に流したのである。

それを信じた燕軍は言葉の通りに実行した。

すると、その悲惨な光景を見た、
城内にいた斉の人たちは皆、怒り、
必死で守りを固め、捕虜にされることを恐れた。

さらに田単は
反間(敵の間者を味方に引き込んだ者、二重スパイ)により、

「田単は燕軍が城外の墓地を掘り返し、
 先祖の亡骸を辱めはせぬかと恐れている。

 そんなことをされたら、どんな祟りがあるかと気にしている」

という情報を燕軍に伝えさせた。

燕軍はことごとく墓をあばき、遺体を焼いたので、
城内にいた斉の人たちはみな泣き、怒りは頂点に達して、
燕軍と戦うことを望んだのである。

このようにして田単は、
策略をもって自軍の士気を高めたのだ。

将兵を用いるべき時がきたと判断した田単は、
すべての飲食物を出して士卒にふるまった後、
武装した兵士は敵から見えないように隠し、
老人や女子供を城壁にのぼらせ、
使者を出して燕軍に降伏を申し入れた。

もちろん、これも策である。

燕軍は皆

「万歳」

と叫んだ。そして、燕軍は気をゆるめてしまったのだ。

そこで田単は、城内から千余頭もの牛を集め、
5色の龍の文様を描いた赤い布を体にかぶせ、
角には戦争で使う刃物をしばりつけ、
尻尾に葦の束をくくりつけて油をそそぎ、
その先に火をつけた。

そして、夜の闇に乗じて牛を放ち、
5千人の精鋭が後ろに続いた。

尻尾が熱くてたまらない牛は怒って燕の軍に突進した。

燕軍は大いに驚いた。
尻尾の火は燃え、明るい龍の文様ばかりが見えて、
触れた者はことごとく傷つき倒れた。

5千の精鋭は虚に乗じて声もたてずに襲い掛かった。
斉の城内からはこれに応じていっせいにときの声が上がり、
老人も子供も手に手に雑多な銅器を打ち鳴らした。
その響きは天地をも揺るがすほどであった。

燕軍はすっかり度肝をぬかれて敗走した。

斉軍は、ついに敵将を討ち取り、
その後も潰走する燕兵を追撃した。

途中の城はみな燕にそむいて田単に加担した。
斉軍の兵力は日ごとに増大し、勝ちに乗じて燕軍を圧倒。
燕軍は敗走をかさね、とうとう黄河を越えて逃げ帰った。

このようにして斉は、
名将楽毅に奪われた70余の城邑を
ことごとく取り戻したのである。

田単はまんまと燕軍の裏をかき、
情勢を逆転させることに成功した。


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