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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

5.富と繁栄編

民心を一つにまとめるには(2)斉の威王の宝      


戦国時代、斉(せい)の威(い)王が
魏(ぎ)の恵(けい)王と共に城外で
狩をしたときのこと。

恵王が威王に向かって尋ねた。

「あなたの国には何か宝がありますか」

「いいえ、何もありません」

すると恵王は、

「私の国は小さい国ではありますが、
 それでも直径一寸ばかりの宝玉で、
 車の前後十二台の距離を明るくできる
 ものが十個あります」

と言った。

これに対して威王は、

「私の宝はあなたのとは違っております。

 私の臣下に檀子(たんし)という者が
 おりますが、この檀子に
 南城(なんじょう)の地を守らせた
 ところ、南隣りの楚(そ)は敬遠して、
 わが泗(し)水のほとりに攻め入ろうと
 しません。

 そのうえ、十二の諸侯が来朝するように
 なったのです。

 また、ハン子(はんし)という者が
 おりますが、これに高唐(こうとう)の
 地を守らせたところ、西隣りの
 趙(ちょう)は黄河のわが漁場を
 荒らさなくなりました。

 また、黔夫(きんぷ)という者が
 おりますが、この黔夫に徐(じょ)州を
 守らせたところ、
 北隣りの燕(えん)はわが北門へ来て、
 西隣りの趙はわが西門へ来て、
 わが国から征伐されないように
 祈るようになりました。

 さらにまた、種首(しょうしゅ)という者
 がおりますが、
 これに盗賊の取り締まりをさせたところ、
 道に落し物があっても
 拾う者がいなくなりました。

 これら四人の臣下は、まさに千里の距離を
 照らすでありましょう。

 わずか車の前後十二台を照らすどころでは
 ありません


と言った。

恵王は恥ずかしくて赤面してしまった。

この威王のもとには、
天才軍師、孫ピンもいた。

人材を宝と考え、積極的に諫言も受け入れて
国力を増した
王であった。

→続く「民心を一つにまとめるには(3)唐の太宗の義」
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