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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

5.富と繁栄編

 泣いて馬謖を斬る(5)    文帝の情の政治      


西漢の文(ぶん)帝は以下のようであった。

文帝の十年(紀元前百七十年)、
文帝の叔父が朝廷からの使者を殺した。

この罪は死刑にあたるが、
文帝は叔父を殺すことに忍びず、
公卿(こうけい)・群臣に命じ、
喪服着用で叔父の家におもむかせ、
そこで号泣させた。

叔父は文帝の意を悟り、自殺した。

十二年、文帝は年貢の半分を免除した。

十三年、朝廷の米倉の長官が罪を犯し、
死刑を宣告された。

その娘が上書して言うには、

「死んだ者は再び生き返ることは
 できません。

 肉刑によって体を斬られた者は
 元に戻すことはできません。

 私の父は死刑を宣告されておりますが、
 どうか私の体をお取り上げくださり、
 お上の召使とされ、
 それで父の刑を償わせてくださいませ」

文帝はこの娘の意をくんで、その父を許し、
さらに体を傷つける肉刑を廃止した。

この年、田地の租税を全額免除した。

公孫鞅と同じく法治を徹底しながらも、
その中身はずい分、
情け深いものであったことが分かる。

文帝は民に寄り添いながら法を
運用したと言えるだろう。

国が繁栄に向かうとき、人々は国を信頼し、
勢いが国全体に満ち溢れているものである。

帝堯(ぎょう)のように、
法律なしでも安心して暮らせる国を
作ることは、今となっては難しい。

法律を作り、これを遵守さえすれば幸福に
暮らせると信じられる社会を作ること、
人によって法の適用が違うなどの不公平が
ないように運用すること、
人の自然な感情に即した法の運用を行う
ことなどが重要である。

企業においては、小規模ならば、
帝堯が行った政治を目指すべきである。

社長自身がルールであり、
しかもその社長を皆が信頼し、
尊敬しているような企業がベストだ。

規模が大きくなるに従い、規則を決め、
遵守するように教育することが
必要にはなるが、根底に社員への血の
通った運用が無ければならない。

罰しても慕われる、
という諸葛亮のような運用が最善であろう。

→続く「規律と柔軟性の匙加減(1)王導の柔軟さ」
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