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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

1.賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ
  「十八史略」に学ぶ意味

繰り返されてきた歴史の持つ意味


「十八史略」は国家の興亡を描いた
歴史書である。

読みながら見えてくるのは、
人間が離合集散を繰り返していることだ。

ひとつにまとまったと思えば、
内部で権力闘争が発生する。

最初は小規模なものであるが、
次第に争いが大きくなって一方が勝ち、
もう一方は敗れる。

勝者が権力を握ったと思いきや、
また別の勢力が現れる。

そこには法則性があることに嫌でも
気づかされるのである。

私たちは日ごろ、何げなく生活しているが、
よく考えてみると、長く時間を共にする人、
ほとんど一緒に過ごさない人が存在する。

前者とは自然と仲間意識が生まれてくる。

「類は友を呼ぶ」ということわざの通り、
考え方や性格の近い者同士が惹かれあう
ようである。

趣味が同じ、という程度の集まりであれば
ほとんど他を害することはないが、

政治思想を同じくする集団であれば
他の政治集団と激しく対立することに
なるし、

利益を得ようとして集まった者たちで
あれば、その利益を得た瞬間にたちまち
内部で対立が生じ、
分裂を始めるものである。

そしてそれは、
時として殺し合いに発展する。

私たちは、人類がこのような離合集散を
繰り返してきたという事実をよく見つめる
必要がある。

そして、私たち自身も、
離合集散を繰り返す存在であることを
認めるべきだ。

聖人でない限り、誰もが必ず自分たちの
グループを作り、そのグループの利益を
守るために他のグループと戦うのである。

それは、家族や親子というような小さな
単位から、企業や政党といった大きな単位の
グループまでさまざまであるが、
規模の大小に関わらず、本質は同じだ。

冷静に人生を振り返ってみれば、
自分が何らかの闘争をしてきたことが
思い起こされるだろう。

では、こう考えてみて欲しい。
勝ったり負けたりしてきたその戦いの結果、
他のグループと和解し、団結して、
より大きなグループに成長させたことが
あるだろうか。

人類が離合集散を繰り返してきたと
いっても、
離れて散り散りになる方が主となる人間と、
合わさり集まることの方が主となる人間が
いる。

前者は対立を生む人であり、
後者は異なる考え方同士の人間を一つに
統合することのできる人である。

そして、歴史上、リーダーと呼べる
タイプの人間は後者に属するのだ。

離合集散の繰り返しというのは、つまり、

対立を好む者
=自分の利益を中心に考える者


統合を好む者
=他者と自分の利益の双方を考える者


の争いの歴史

であったということなのである。

このような視点で、日本の政界、財界、
自社、私的グループなどを見てみると、
やはりどちらのタイプも存在していることに
気づくだろう。

グループ内があまりに「対立」派ばかりに
なると物事は発展せず、停滞してしまう。

「統合」派の中から優秀な人物が出ると、
集団は一つにまとまって前に進む。

繰り返す歴史からの
現代人へのメッセージは、

ひとつになる努力をせよ

ということであると私は考える。

このメッセージを汲み取り、本気で
取り組む人には幸福が約束されるだろう。

また、国ならば政治家に、
企業ならば社長や経営陣に
本気で取り組む人物が多ければ、
国も企業も発展するはずである。

一言で歴史といっても、
それは山と積まれた屍(しかばね)の記録で
あることに思いを致さねばならない。

例えば、西漢(せいかん)王朝を簒奪した
王莽(おうもう)の新(しん)王朝の頃に
起こった赤眉(せきび)の乱や、
唐(とう)王朝の玄宗(げんそう)皇帝の
御世に勃発した安史(あんし)の乱に
おいて、ある研究者はそれぞれ一千万人が
死んだと推定している。

一度(ひとたび)、
対立が深まって戦闘状態になると多くの
死傷者が出るし、国は荒廃してしまう。

だからこそ、「孫子の兵法」では、

兵は国の大事(だいじ)なり。
死生の地、存亡(そんぼう)の道、
察せざる可(べ)からざるなり。

意味:
戦争は国の一大事である。
なぜならば、国民の生死と国の存亡の
分かれ目となるからだ。
よって熟慮のうえで方針を
決定しなければならない。
〔第一篇計(けい)〕

と冒頭で述べ、末尾では、

明主(めいしゅ)は之(これ)を
慎(つつし)み、
良将は之を警(いまし)む。
此(こ)れ国を安んじ
軍を全うするの道なり。

意味:
聡明な君主は戦争を慎み、
良将は安易に戦争することを警める。
これこそ、国を安全に保ち軍隊を
保全する方法なのだ。
〔第十三篇火攻(かこう)〕

と締めくくっているのである。

私たちは、この歴史的事実を、
人類がいかに残酷な時間を積み重ねてきたか
という事実をしっかりと認識しなければ
ならない。

そのうえで、いかにして相(あい)対立する
ものを統合していくかということに
心をくだき、知恵を働かさねばならない
のである。

→続く激動期には経験は役に立たない」
「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

 

 

 

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