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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

8.時代を読む先見と行動編

先が見えない時代のリーダーの資質…(5)学ぶ謙虚さ

第四の資質は、

学ぼうとする謙虚さをもっている

という点である。

唐の太宗、李世民は、まだ秦(しん)王の
時代から学問所を設けて、
十八人の学者を文学館学士に任命した。

李世民は暇さえあればここに来て、
学問や書籍について学士たちと討論した
という。

即位後も、李世民の学習意欲が
衰えることはなかった。

最終的には帝王の教科書「帝範」十二篇の書
を作り、これを太子に与えている。

どうすれば国を維持、発展させ続けられるか
ということについて、
学び続けた人であった。

宋の太祖、趙匡胤も、
よく人の意見を受け入れた。

彼が学ぶ理由がわかるような逸話が
残っている。

ある日のこと、趙匡胤は朝政を終えて居室に
帰ったが、座ったまま、長時間、
いかにも不愉快そうな様子であった。

お側の者が心配して理由を尋ねたところ、
趙匡胤はこう答えた。

「その方らは、天子という稼業は簡単なもの
 と思っているかもしれないが、
 まったくそんなことはない。

 今日はたまたま、愉快な気分となって、
 そのはずみにあることを指示したところ、
 とんだ間違いを犯してしまった。

 それで不愉快なのだ」

趙匡胤が政務を誠実に行おうとしているのが
伝わってくる。

元の太祖、成吉思汗が東インドに侵入して
鉄門関(てつもんかん)の地に駐留していた
とき、一頭の珍獣が現れた。

鹿のような形をしているが尾は馬のようで
あり、全身が緑色をしていて一本の角が
あった。

しかも人間の言葉を話すのである。

その獣が成吉思汗のお側の者に向かって
こういった。

「お前の主人は早く国へ還った方がいい」

そこで成吉思汗はその獣のことについて、
大学者である耶律楚材(やりつそざい)に
尋ねたところ、耶律楚材の返答は
こうであった。

「この獣は角端(かくたん)といって、
 各地の言葉を話すことができます。

 生を好み、死を憎むめでたい動物です。

 これはおそらく天から陛下への吉兆の
 お告げでございましょう。

 どうか陛下には天の心に従われて、
 この数ヵ国の人命をお許しくださいます
 ように願います」

これを聞いた成吉思汗は、
その日のうちに軍隊を引き返した。

この話は幻想的過ぎて、
成吉思汗が見た夢を記録したものでは
ないかとも思うが、成吉思汗が耶律楚材の
意見に素直に耳を傾けていたことは
十分に分かる。

太祖にこうした姿勢があったからこそ、
元は発展したのである。

→続く「先が見えない時代のリーダーの資質…(6)雄大な構想を描く」
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