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エピソード集
「孫子の兵法」を駆使したと思われる兵法家のエピソード2
韓信「背水の陣」
●韓信の「背水の陣」
兵を必死で戦わせるため、 わざと逃げ道のない危険な場所に布陣すること。
【登場人物】
漢(かん):将軍 韓信(かんしん) 趙(ちょう):宰相 陳余(ちんよ)、将軍李左車(りさしゃ)
韓信の率いる漢軍は、 兵数万を率いて趙を攻撃しようとしていた。
漢軍が攻めてくるとの知らせに趙王と宰相の陳余は 兵をA地点に集結した。20万人の大軍勢である。
将軍の李左車が陳余に献策した。
「漢の将軍、韓信は相当なやり手です。 油断できぬ相手です。
今、A地点に通ずる道は細くて、車が並行して進めず、 騎馬も列を組んでは通れません。
そんな道が数百里も続くのですから、 兵糧は必ず後方に取り残されましょう。
私に精兵3万をお貸しくだされば、間道を使い、 敵の兵糧を断ち切ってみせます。
あなたは守りを固め、戦ってはなりません。
韓信は進むことも退くこともできず、
孤立して飢えてしまうので、 10日もせぬうちに韓信の首をお届けできるでしょう。
どうかこの策を採用してください」
陳余はこう答えた。
「韓信の兵は数万と称しているけれども、実は数千だ。 しかも長旅で疲労の極みにある。
こんな敵さえ避けて戦わないならば、 さらなる大軍が襲ってきたときどうするか。
わしは諸侯から臆病者とみなされて攻め込まれてしまうわ」
そうして李左車の策を聞き入れなかったのである。
韓信はこのことをはなっておいたスパイから聞くとニヤリと 笑い、兵を率いてA地点へ下り、その30里手前に野営した。
夜半になって軽騎兵2千人を選び、 一人ひとりに赤い幟(のぼり)を持たせて間道を行かせ、
趙軍の砦が見えるところに潜ませた。
「いいか。わが軍が逃げる姿を見たら、
趙軍は砦を空にして飛び出してくるはずだ。
その時、すかさず砦に侵入し、
趙の幟を引き抜いて漢の赤い幟を立てるのだ」
韓信は兵1万を出動させ、河水を背に布陣させた。
このセオリー無視の陣取りを見て趙軍は嘲り笑った。
明け方、韓信は大将の旗を立て、
太鼓を打ってA地点へ押し寄せた。
趙軍はこれを迎え撃ち、激戦が続いた。
タイミングを計って韓信はわざと自陣へ逃げ込んだ。
それを見た趙軍は砦を空にし、
兵士全員が戦利品を得ようと韓信の逃げ込んだ漢軍を 襲ったが、後の無い漢軍は猛反撃。打ち破れない。
そのとき、韓信が潜ませた軽騎兵2千人が動いた。 空になった趙軍の砦に入り込み、
趙の幟を抜いて漢の赤い幟2千本を立てた。
趙軍は勝つこともできず砦も奪われて大混乱。 逃げまどい始めた。
そこをすかさず漢軍は挟み撃ちにして趙軍を破り、 降伏させた。
陳余を斬り、李左車を捕虜にした。
戦勝祝いの席で、武将が韓信に質問した。
「兵法では山などの高い地形を右手か背にし、
水沢などを前か左手にするのが鉄則です。
ところが将軍は私たちに水を背にして布陣させました。
それで味方は勝ったのですが、これはどんな戦術でしょうか」
「(孫子の)兵法には、兵を死すべき地に陥れて後に生き、
兵を亡くなる地に置いて後に存す、とあるではないか。
私はまだ兵の心を掌握しきれていない。
彼らを生きられる地に置いたなら、 みんな逃げ出してしまっただろう。
そうなったらどうやって戦うというのか」
諸将、みな感心して
「とても我らは将軍に及びません」
と言った。
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