ハマモト経営HOME

「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

6.リーダーの条件と承継編

 権力者とリーダーの違い(3)湯王の祈り      


湯王の例を見てみよう。
貪欲、残虐な性格で、寵姫(ちょうき)の
末喜(ばっき)と共に
酒池肉林(しゅちにくりん)などという
暴挙を行っていた夏の桀(けつ)王を
伐(う)ち、殷を興した湯王には
こんな話が残っている。

ある日、湯王が外出すると、
一人の猟師が網を四面に張りめぐらして
祈っているのを見た。

その祈りの言葉は、

「天より降り来るもの、
 地より出で来るもの、
 四方より来るものは皆、
 わが網にかかれ」

というものであった。

湯王が嘆いていうには、

「ああ、ひどい。
 これでは絶滅してしまう」

そこで、その網の三方を取り除かせ、
改めて祈っていった。

「左へ行きたいものは左へ行け、
 右へ行きたいものは右へ行け、
 わが命にしたがわない者だけ
 わが網にかかれ」


諸侯はこの話を伝え聞き、
口々にこういった。

「湯王の仁徳は偉大である。
 禽獣(きんじゅう)にまで及ぶとは」

また、干ばつが七年も続いたときの
ことである。

天文官が占っていうには、

「これは人間をいけにえにして
 祈るほかに方法がありません」

と。

湯王は、

「私が雨乞いをするのは人民のためなのだ。
 もし、どうしても人を犠牲にして祈れと
 いうのならば、
 私自身がその犠牲になろう」


といって、飲食や行動を慎み、からだを
洗って心身のけがれを取り、爪を切り、
髪を断ち、白木の馬車を白馬にひかせて
それに乗り、身には白い茅(ちがや)を
まとった死装束で、
わが身を犠牲として桑林(そうりん)の野
に行って雨乞いをした。

そのとき、六つのことで
みずからの不徳を責めた。

「私の政治が節度を失っていなかったか、
 人民が仕事を失い、
 苦しんでいなかったか、
 私の宮殿が立派過ぎていなかったか、
 後宮の女たちの頼みごとに
 応えすぎていなかったか、
 賄賂が横行していなかったか、
 讒言する者が多くなっていなかったか」


この言葉の終わらないうちに、
大雨が降ること数千里四方に及んだ。

このような徳の高さでもって人々の上に
立ち、政治を行うのが王者である。

→続く「権力者とリーダーの違い(4)周の文王の善政」
「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

 

 

 

inserted by FC2 system