ハマモト経営HOME

「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

5.富と繁栄編

人が富以外で欲しがるもの(3)謝安、身内を推挙す      


また、仕事の内容と密接な関係があるものに
地位、ポストがある。

地位が上になるほど大きな仕事ができる
ので、向上心のある者ほど昇進を望むことが
多い。

しかし、本来、地位というものは、
自分から得たいといって得るものではない。

日ごろの仕事ぶりを見ていた周囲の
人間から実力を認められ、
推し立てられて得るものだ。

東晋王朝では、北方の秦(しん)が強大で
あることに不安を感じていた。

そこで時の孝武(こうぶ)皇帝は
詔(みことのり)を下して秦を防ぎ鎮める
適任者を募った。

政権を握っていた謝安(しゃあん)は
兄の子の謝玄(しゃげん)を推挙したが、
これを聞いて謝安の政治上の
ライバルだったある男は感嘆して言った。

「謝安の聡明なのは、世間の人々とは違い、
 身びいきと批判されかねない人事を
 断行できる点にある。

 謝玄の才能があれば、
 きっと期待に応えられるだろう。

 私は以前、謝玄と一緒にいて謝玄の
 人使いのうまさを知っているが、
 彼はほんの少しの間でも存分に能力を
 発揮させていた」

こうして謝玄は就任し、
軍を率いて不敗の精強さを誇った。

当時、謝玄の軍は北府兵(ほくふへい)と
呼ばれ、敵はこの軍を畏れていたという。

身内を重要なポストに抜擢するのは難しい。

能力主義による人事でなく専横と
とられかねないからである。

しかし、もしも本当に能力が高いので
あれば、それらの批判を恐れることはない。

就任後、本人が十分な実力を示すことが
できれば、批判は間違っていたと
証明されるからだ。

謝玄はそれだけ能力が高かったからこそ、
謝安は自信をもって推挙したのである。

→続く「人が富以外で欲しがるもの(4)桓温の下心」
「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

 

 

 

inserted by FC2 system