ハマモト経営HOME

「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

5.富と繁栄編

人が富以外で欲しがるもの(1)魏徴が望んだ報酬      


国や企業など、
人の集団が繁栄に向かうとき、
そこには求心力としてはたらく力がある。

その一つが富だ。

貧乏で食うや食わずの状態から脱し、
豊かな生活を築きたいという欲求は誰の心
にもある。

それを上手に刺激したとき、
人はやる気を出すものだ。

しかし、
人は富のためだけに働くのではない。

唐(とう)の名宰相の一人、
魏徴(ぎちょう)はあるとき、
太宗(たいそう)文武(ぶんぶ)皇帝に
こう言った。

「どうか私を良臣にならせてください。
 忠臣とはならせないでください」


太宗は不思議に思い、

「忠臣と良臣とはどのように違うのか」

と問うた。魏徴が言うには、

「后稷(こうしょく)、契(せつ)、
 皐陶(こうよう)らは堯(ぎょう)、
 舜(しゅん)に仕え、
 君臣ともに心を一つにして国を治めて
 天下を太平に導き、繁栄を享受しました。

 これが世にいう良臣でございます。

 また、夏(か)の桀(けつ)王の家臣の
 竜逢(りょうほう)や殷(いん)の
 紂(ちゅう)王の家臣の比干(ひかん)
 は、群臣の居並ぶ、君の面前でその非を
 とがめたため、
 身は殺され国は滅びました。

 これが世にいう忠臣でございます」

と。

太宗はこれを聞いて、とても喜んだ。

人には人生の中で何かを成し遂げたい、
という欲求がある。

その何かに含まれる要素として
重要なものに、

人の役に立つ

ということがあるのだ。

仮に一軒の家を建てるとしよう。

自分で設計図を書き、材料を集め、
こつこつと作業を続けて数年後に
ようやく完成したとすればうれしいには
違いない。

しかし、そこに住むのは自分だけで、
誰も尋ねて来ないとすれば寂しい限りで
ある。

やはり、共に暮らす家族、共に何かに興じる
友などがいてこそ、家を建てた甲斐がある
というものだ。

優秀なリーダーと共に、
多くの人のために役立つ仕事ができれば、
これに過ぎる喜びは無い。

魏徴は太宗に対して良臣となれることを
望んだ。

太宗と共に大仕事を為すことが
魏徴の幸福にもつながるからである。

魏徴にとって、その仕事そのものが
大きな報酬であったといえよう。

→続く「人が富以外で欲しがるもの(2)宋王朝の臣下の忠誠心」
「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

 

 

 

inserted by FC2 system