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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

5.富と繁栄編

  富の本当の活かし方(1) 疏廣と疏受      


富を得ると、
富に使われてしまう人間が多い。

「十八史略」に登場する権力者のほとんどが
富によって私欲を増幅させ、最後は
破滅してしまうパターンに陥っている。

昔も今も、富は人間を狂わすものである。

もしも逆にこれを使いこなすことが
できれば、本人も周囲の人間も皆、
幸福になれるのだが。

西漢の孝宣(こうせん)皇帝のとき、
太子の守役の疏廣(そこう)が、
兄の子で同じく守役の疏受(そじゅ)と
上書して、辞職を願い出た。

宣帝(せんてい)はこれを許して、
それまでの功に対して黄金を賜った。

大臣や朝廷の官吏、昔なじみの友人などが、
故郷へ帰る道中の無事を祈って
道祖神(どうそしん)を祭り、
送別会を都の東門の外で開いたら、
見送りをするための者の車が数百台にも
及んだ。

道路で見物していた者たちは口々に、

「賢人であったからなぁ、お二人は」

と言い合った。

帰郷後、二人は毎日、天子から賜った黄金を
売って銭に替え、酒食の用意を整えて、
親戚や昔の友人、客人などを招き、
共に遊んで楽しみ、
子孫のために財産を残さなかった。

その理由についてこう述べた。

「すぐれた者が多くの財をもっていれば
 せっかくの志をだめにしてしまうし、
 愚かな者が多くの財をもっていれば
 過ちを増すことにつながる。

 それに富を持つと多くの人から
 怨まれ易いものだ。

 私は子孫が過ちを増したり、
 人から怨まれたりすることを
 望まないのです」

疏廣と疏受。

辞職したときの見送り人の多さから
人望のほどがうかがえる。

富をもっても私欲を増幅させることのない、
富を使いこなす側の人間だった。

巨万の富はすぐれた者をだめにしがちで、
愚かな者はさらに愚かにしてしまう。

子孫にそのまま残すなど、
子孫を不幸にする所業である。

しかし、そんな富も人のために使えば
相手も自分も幸福にしてくれるという
性質もあわせ持つ。

二人は自分たちが天子からもらった黄金を、
親戚や昔の友人、客人などとの
遊興に使った。

彼らは皆、その恩を忘れず、
二人の子孫に何かあったときには救いの
手を差し伸べようとするだろう。

子孫が助けてもらえるような
富の使い方をしたのである。

→続く「富の本当の活かし方(2)人を集める高歓」
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