ハマモト経営HOME

「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

1.賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ
  「十八史略」に学ぶ意味

激動期には経験は役に立たない


歴史を学ぶことの重要さはご理解いただけた
と思うが、問題は、現代に生きる私たちに
とって、

歴史の知識は机上のものであり、日々の経験
は体で覚えた生々しいものなので、

どちらかというと経験をものさしにして、
新しく起こった問題の対応策までも
考えがちなことである。

これは、過去の延長線上の問題を解決するの
には大きな力を発揮するが、
未知の問題には役に立たない。

昨今、よく使われる言葉に「想定外」と
いうものがある。

未曾有の災害などを前にして、
問題解決にあたる当事者が、

「我々にとって想定外のことが発生した。
 それで対応が後手に回った」

というような使い方をする。

人間にとって経験は極めて重要である。
経験するからこそ、失敗も減らせるし、
新しいことにも過去の経験を応用して
対応できるようになる。

経験は大いに積まねばならない。
しかし、経験を積めば積むほど、
自分が想定する異常事態の幅が
狭くなっていくのも事実である。

例えば、コンビニエンスストアで
深夜勤務を続けているとしよう。

十年間働いて、一度も強盗に入られたこと
がなければ、働きながら、

「もしも強盗が襲ってきたらどうしよう」

という不安が心に浮かぶことはほとんど
無いだろう。

しかし、まだ働き始めて間もない頃には、
万が一のときの自分の行動を頭に
思い描くことが多いに違いない。

経験を積むと、いつの間にか、
自分の過去の経験が基準となっていく。

そうすると、経験しなかった問題は
すべて「想定外」になってしまうのである。

このように経験というのは、
実際に経験した範囲内のことについては
非常に効果を発揮するが、
それ以外のことについては無力であり、
むしろ、なまじっかな経験は無い方が
よいともいえるのだ。

時折、企業の採用で、「経験者歓迎」と
するものがある一方で、「経験者お断り」
としているものも目にすることがある。

これなどは、その人間の他社での経験が
自社にとってはむしろ阻害要因になると
判断してのことであろう。

では、経験をものさしに出来ないとすれば、
どうすればよいのか。

それは過去に起きた事例を研究して訓練を
積んでおくことである。

2011年3月11日に発生した
東日本大震災では、津波による死者、
行方不明者が多数に上り、
福島の原子力発電所の事故も甚大な被害を
もたらした。

この直後には「想定外」の言葉が飛び交った
が、かつて平安時代に貞観(じょうがん)
地震という、今回の震災と同規模クラスの
地震が起こっていたとさまざまな
メディアで報道された。

日本のリーダー層でどれくらいの人たちが、
この貞観地震クラスの地震発生を想定して、
事前に対策を練り、いざというときの訓練を
積んでおくことを提唱していただろうか。

少なくとも政府には一人もいなかった
ようである。

まったく未知のことに挑戦する場合に
おいても、経験は役に立たない。

例えば、企業が日本を飛び出し、海外に
打って出ようとして痛い目に合ったという
話はよく聞く。商習慣がまったく異なる
地域で日本流のやり方をしても通用しない。

となれば、事前に、

自分の経験ではなく
他人の経験を勉強しておく


ことが重要となる。中国に進出するなら、
中国でのビジネスで経験豊富な人に
注意点をよく聞いておけば、
失敗を減らすのに役立つはずだ。

人類は他人の経験を克明に記録してきた。
それが歴史である。

本章の冒頭でも触れたが、
人類はかつて何度も同じことを繰り返して
いる。もちろん、まったく同じではないが、
似通った問題をすでに経験している
可能性が高い。

今のような激動期にこそ、
歴史を最大限に活用すべき

である。

→続く歴史を読み解けば次の手が見える」
「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

 

 

 

inserted by FC2 system