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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

8.時代を読む先見と行動編

人を魅きつけて力をつけていく行動(1)宋の景公の善言

魅力ある人物の周囲には人が集まり、
次第にその輪は広がっていく。

それがまた魅力を生んでさらに人が集まる。

人が集まれば集まるほど、正しい情報も
集まるので、新しい変化にも適切に
対応できるようになる。

そしてさらに勢力は拡大していく。

ある人間の集団が成長、発展していく際に
は、このような循環が起こるものである。

そして、輪の中心にいる人間の魅力には、
昔も今もそれほど大きな差はないようだ。

春秋(しゅんじゅう)時代、宋(そう)の
国に景(けい)公という君がいた。

ある年に、不吉と考えられていた火星が
二十八宿(しゅく)
(赤道・黄道〈こうどう〉付近で天球を
 二十八に区分し、それぞれを一つの宿と
 したもの)
の一つ、心宿(しんしゅく)の位置で
動かなくなった。

この心宿は地上に割り当てると宋の領域に
当たるので、景公は何も凶事が起きなければ
よいがと心配した。

天文官の子韋(しい)はこう進言した。

「災難を逃れるには、
 災いを宰相に移されるのがよいでしょう」

すると景公は答えた。

「宰相は私の股(もも)や肱(ひじ)と
 なって動いてくれる大事な存在だ。

 移すわけにはいかぬ」

子韋はまた進言した。

「では、災いを民に移されると
 よいでしょう」

景公は答えた。

「人君は民を頼りとしているのだ。

 移すわけにはいかぬ」

子韋はさらに進言した。

「では、災いを歳(とし)に
 移されるとよいでしょう」

景公は答えた。

「災いを歳に移せば、
 飢饉が起こって民が苦しむだろう。

 私は民のための君主なのだから、
 移すわけにはいかぬ」

子韋はこういった。

「天の神は高いところにおられますが、
 低い地上の事をお聴きになって、
 善人には福を、悪人には禍(わざわい)を
 与えられます。

 わが君は今、君としての善言が三つ
 ございましたので、
 きっと火星は動くことでしょう」

ただちに観測してみたところ、
火星は心宿から一度ほど移動していた。

→続く「人を魅きつけて力をつけていく行動(2)趙匡胤の合交斉武」
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