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「十八史略」に学ぶ兵法経営【目次】

7.権力者が陥る罠と組織の崩壊編

手柄と慢心(6)       衆望を集めた郭子儀   


唐(とう)王朝の玄(げん)宗、
粛(しゅく)宗、代(だい)宗、
徳(とく)宗の四代に仕えた
郭子儀(かくしぎ)は、安史(あんし)の乱
で大功を立て、その後もよく異民族の侵入を
防いだ。

その功業は天下を蓋(おお)うほど偉大で
あり、王朝を奪うことも可能であったが、
天子は彼の謀反を少しも疑うことは
なかった。

その位は人臣としての頂点を極めたが、
民衆は誰も彼を妬まなかった。

あるとき、使いの者を魏博(ぎはく)の地の
節度使である田承嗣(でんしょうし)のもと
へ遣わした。

すると田承嗣は、郭子儀のいる西の方を
望んで拝礼し、こういった。

「私のこの膝(ひざ)は、長い間、
 人に対して屈したことはなかった。

 しかし、今、公のために膝を曲げて
 拝礼いたします」

これほど尊敬されていたのである。

家族の人数が三千人、八人の息子と七人の
婿(むこ)は皆、地位の高い官職に就いた。

孫は数十人いて、ご機嫌伺いに来る彼らの
見分けがつかず、ただ「うん、うん」と
うなずくばかりであった。

八十三歳で亡くなった。

権力は人を狂わせるものである。

自分の好き放題にものごとを
取り仕切られるようになれば、
その権力者に対して恐怖を抱く者、
怨む者、擦り寄る者など、
敵味方が入り乱れるようになり、
最後には権力者は邪魔者として抹殺される
方向へ向かいがちだ。

郭子儀はそのことをよく知っていたの
だろう。

どんなに力を得ても、
上にも下にも謙虚で人望を得た。


先の韓(かん)タク冑(ちゅう)とは
真反対であり、

こう生きれば人生は安泰である

ということの手本を示したといえよう。

山あり谷ありの人生において、
谷のときはさほど危険はない。

謙虚に努力を続けることが多いからである。

問題は山のときの過ごし方だ。

慢心を抱けば、人生すべてを無に帰する
ような失敗をしでかす可能性もある。

企業経営においても、
業績好調時こそ気をつけねばならない。

社長の心からは、
慢心の二文字を取り去るべきである。

→続く「傲慢と短気(1)楚の懐王、ワナにはまる」
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