ハマモト経営の指針集 『論語』より

主要参考図書『論語新釈』宇野哲人著 講談社学術文庫

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「子路政を問う。子曰く、『之に先んじ、之に労す。』益を請う。曰く、『倦むことなし。』」

読み方「しろ まつりごとを とう。し いわく、『これに さきんじ、これに ろうす。』えきを こう。いわく、『うむ こと なし。』」

(意味)子路が政治を行う方法を質問した。孔子がいうには、「民に先んじて善を行い、民に先んじて勤労することだ」と。子路はさらにないかと問うた。孔子は、「この2つを倦むことなく行いなさい」といった。

→ 人は、自分が生きるに当り、すでに生きている先人のまねをする。

中でも、一番偉いと言われる人のマネをしたがるものだ。

子供や部下をもつ人は、その点を心して、日々の勤めを行わねばならない。






「仲弓季子の宰となり、政を問う。子曰く、『有司を先にし、小過を赦し、賢才を挙ぐ。』曰く、『焉んぞ賢才を知りて之を挙げん。』曰く、『爾の知る所を挙げよ。爾の知らざる所は、人其れ諸を舎てんや。』」

読み方「ちゅうきゅう きしの さいと なり、まつりごとを とう。し いわく、『ゆうしを さきに し、しょうかを ゆるし、けんさいを あぐ。』いわく、『いづくんぞ けんさいを しりて これを あげん。』いわく、『なんじの しる ところを あげよ。なんじの しらざる ところは、ひと それ これを すてんや。』」

(意味)仲弓が魯の大夫の季子に仕えて家臣の長となり、政治を行う方法を質問した。孔子がいうには、「まず役人を用いて仕事を分担させ、民の小さな過失は赦し、賢(徳ある者)才(能ある者)を挙げ用いよ」と。仲弓は、「どうすれば賢才を用いることができますか」と尋ねた。孔子は「ただあなたが知っている賢才を挙げればよい。あなたが知らない賢才は、他人がそれをすてておきはしないから心配しなくてよいよ。」といった。

→ トップが賢才を挙げる姿勢を示してみせれば、周囲の人もそれに従うのである。

ただおもねるばかりのイエスマンを登用すれば、組織全体もそうなっていく。

トップ1人の意思が全体を決めるのだ。己を律しなければならない。






「上礼を好めば則ち民敢えて敬せざるなし。上義を好めば則ち民敢えて服せざるなし。上信を好めば則ち民敢えて情を用いざるなし。夫れ是の如くなれば則ち四方の民其の子を襁負して至る。焉んぞ稼を用いん。」

読み方「かみ れいを このめば すなわち たみ あえて けいせざる なし。かみ ぎを このめば すなわち たみ あえて ふくせざる なし。かみ しんを このめば すなわち たみ あえて じょうを もちいざる なし。それ かくの ごとく なれば すなわち しほうの たみ その こを きょうふして いたる。いづくんぞ かを もちいん。」

(意味)上にいる者が真に礼を好めば民が己を尊敬しないことはない。上にいる者が真に義を好めば民は己に服さないことはない。上にいる者が真に信を好めば民はまごころを用いないことはない。このようであれば、四方の民がその子をおんぶして己のために耕作する。どうして自ら五穀を栽培する必要があろうか。

→ 上に立つ者と下の者では、自ずから学ぶ内容が異なる。

具体的な手法を学ぶのは、下の者だ。

上に立つ者は、礼・義・信を学び、実践することが大切だ。そうすれば、あらゆる能力者を活用できる。






「子曰く、詩三百を誦し、之に授くるに政を以てすれども達せず、四方に使いして専対すること能わずんば、多しと雖も亦奚を以て為さん。」

読み方「し いわく、し さんびゃくを しょうし、これに さずくるに まつりごとを もって すれども たっせず、しほうに つかいして せんたいする こと あたわずんば、おおしと いえども また なにを もって なさん。」

(意味)孔子がいうには、詩経に書いてある詩三百篇を読んだ者に政治をまかせても政道に達せず、四方の諸侯に使いに行っても独りで応対することができなければ、多くの詩を読んだといっても何の役に立とうか。

→ ただ読むばかりで考えず、自分で悟らない者は、学んでも意味が無い。

知識のための知識を重視する社会はおかしな方向へ行く。

本来の目的は何か、何のための学問かをよく考え、実戦に生かそう。






「子曰く、其の身正しければ、令せずして行わる。其の身正しからざれば、令すと雖も従わず。」

読み方「し いわく、その み ただしければ、れいせず して おこなわる。その み ただしからざれば、れいすと いえども したがわず。」

(意味)孔子がいうには、上の人が正しいことをして民を率いれば、命令しなくても徳が行われるようになる。上の人が正しい行いをしていなければ、命令しても徳は行われない。

→ 命令は言葉だが、言葉は実践を伴ってこそ力を持つのだ。

自分が行っていれば、それを人に命じたときに説得力がある。

行っていなければ、面従腹背となる可能性が高い。要注意だ。






〔子衛の公子荊を謂う。「善く室に居る。始めて有るに曰く、『苟か合る』と。少しく有るに曰く、『苟か完わる』と。富んに有るに曰く、『苟か美し』と。〕

読み方「し えいの こうし けいを いう。「よく しつに おる。はじめて あるに いわく、『いささか あつまる』と。すこしく あるに いわく、『いささか そなわる』と。さかんに あるに いわく、『いささか うつくし』と。」

(意味)孔子が衛の公子荊を評していうには、「善く家を治めた人だ。始めに形ばかりの物が有ると『ちょっと集まった』と言って満足した。器物貨財などが有るようになると『ちょっと完備した』と言ってさらに集めようとはしなかった。十分に有るようになると、『ちょっと美しくなった』といって、更に求めようとはしなかった。

→ 「足るを知る」という言葉があるが、できる人はごく少ない。

人生を、生まれてから死ぬまでの有限なものだと思うと、その間に貪ろうとする。

生まれる前もあり、死んだ後もあると思えば、今貪ることの虚しさを感じるのではないだろうか。






「子衛に適く。冉有僕たり。子曰く、『庶なるかな。』冉有曰く、『既に庶なり、又何をか加えん。』曰く、『之を富まさん。』曰く、『既に富めり、又何をか加えん。』曰く、『之を教えん。』」

読み方「し えいに ゆく。ぜんゆう ぼくたり。し いわく、『しょ なるかな。』ぜんゆう いわく、『すでに しょなり、また なにをか くわえん。』いわく、『これを とまさん。』いわく、『すでに とめり、また なにをか くわえん。』いわく、『これを おしえん。』」

(意味)孔子が衛の国に行った。冉有がしもべとなっていた。孔子がいうには、「民が多いことだ。」と。冉有が質問していうには、「既に民が多いうえに、何をなさいますか。」と。孔子は「これを富ませよう。」といった。「既に富んだうえには、何をなさいますか。」と冉有が問うと、孔子は「教育して道を教えよう。」といった。

→飢えている人に対しては、徳の教育はできない。

会社内でも、給料が少なくて生活が苦しい社員は、人としてどうあるべきかなど関心が無い。

まずは、売り上げを伸ばし、利益を増やすこと。その後に初めて教育ができるようになる。






「子曰く、苟も我を用うる者有らば、期月のみにして可なり。三年にして成ることあらん。」

読み方「し いわく、いやしくも われを もちうる もの あらば、きげつ のみに して かなり。さんねんに して なる こと あらん。」

(意味)孔子がいうには、もし人が私を用いて政治をまかせるならば、12ヶ月だけで十分とはいかないまでも少しの成果を挙げることができる。3年たてば、政治上の功績は十分となるだろう。

→人が何かに携わった場合でも、やはりこの期間でこれくらいの成果を目標にするのが妥当ではないか。

逆に言うと、1年かかっても全く成果無しというのはまずいということだ。

まして、3年たったら見違えるくらいにならねばおかしい。現状を反省してみよう。






「子曰く、『善人も邦を為むること百年ならば、亦以て残に勝ち殺を去るべし。』と。誠なるかな是の言や。」

読み方「し いわく、『ぜんにんも くにを おさむる こと ひゃくねん ならば、また もって ざんに かち さつを さるべし。』と。まこと なるかな この げんや。」

(意味)孔子がいうには、『善人でも相継いで邦をおさめて百年にもなれば、それによってむごい悪人にも勝ち皆善人となって、死刑を用いないようになる』という古語があるが、誠である、この言葉は。

→会社の中に規律違反に対する罰則を設けることは必要だ。

しかし、罰則が必要なくなった状態が理想である。

トップが徳によって治めようとすれば、徐々に罰は減っていく。まずは率先垂範から。





「子曰く、如し王者ありとも、必ず世にして後に仁ならん。」

読み方「し いわく、もし おうじゃ ありとも、かならず せいに して のちに じんならん。」

(意味)孔子がいうには、聖人の徳を具え天の命で王者になる者があっても、必ず30年かかって後に、徳が天下に行き渡るものである。

→ それほどすばらしい人物がトップであっても30年かかるのだ。

まして凡人が努力してそのような国を築こうとしても一代でできるわけがない。

志を大きく持って、次代につなぐようにしなければならない。




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