参考図書『論語』宇野哲人全訳注 講談社学術文庫
読み方「し まれに いう、りと めいと じんと。」 (意味)孔子は利と命と仁についてはめったに言わない。 読み方「まべんは れいなり。いまや じゅんなるは けんなり。われは しゅうに したがわん。したに はいするは れいなり。いま、うえに はいするは たいなり。しゅうに たがうと いえども、われは したに したがわん。」 (意味)麻を織って冠にするのは古い礼だが、今は手間が省けて容易なので絹糸で織っている。道理上差し支えないので、私は衆人のすることに従う。臣が君を拝するとき、堂の下で拝するのが古い礼だが、今の人は堂の上で拝している。これは驕慢であり、道理上おかしい。衆人とは違うが、私は堂の下で拝する古い礼に従おう。 読み方「し しを たつ。い なく、ひつ なく、こ なく、が なし。」 (意味)孔子の心には意(私意をもって事に臨むようなこと)がなく、必(なんでも予定通りに行おうとするようなこと)がなく、固(一事を固執して融通の利かないようなこと)がなく、我(ただ我あるを知って他人を考えないようなこと)がない。 読み方「われ しる こと あらんや。しる こと なし。ひふ あり われに とう。こうこうじょたるも、われ その りょうたんを たたいて つくす。」 (意味)世間の人は私が何でも知っているように言うが、知ってはいないのである。いやしい男が私に道理を尋ね、その人が愚かで何も知らない様子であっても、私は全部のことを余すことなく多くを教えるので、何でも知っていると思うのであろう。 読み方「し、しさいの ものと べんいしょうの ものと こしゃとを みれば、これを みれば わかしと いえども かならず たち、これを すぐれば かならず わしる。」 (意味)孔子は喪服の者と貴人の礼服の者と盲人とを見れば、自分が座っているときは相手が若くても必ず起立して敬意を表し、もしその前を通り過ぎれば小走りにはやく行き過ぎて、敬意を表した。 読み方「しこう いわく、『ここに びぎょく あり。とくに おさめて これを ぞうせんか。ぜんかを もとめて これを うらんか。』 し いわく、『これを うらんかな。これを うらんかな。われは かを まつ ものなり。』」 (意味)子貢がいうには、「ここに美しい玉(孔子のこと)があります。この宝を箱に納めてしまっておきましょうか、善い価を求めて売りましょうか。」 孔子がいうには「売ろうよ。売ろうよ。私は善い価で買う人を待つ者である。待ってもこなければ売らないまでである。」 読み方「し きゅういに おらんと ほっす。あるひと いわく、『いやし、これを いかん。』 し いわく、『くんし これに おらば なんの いやしき ことか これ あらん。』」 (意味)孔子が九夷という東方の地に居ろうという意をもらした。或人がいうには、「九夷は風俗のいやしいところです。どうしておられましょう。」孔子が答えていうには、「君子がそこにいるならば、いやしい地も礼儀の行われる地にしてしまいますので、いやしいことはありません。」と。 読み方「いでては すなわち こうけいに つかえ、いっては すなわち ふけいに つかえ、そうじは あえて つとめずんば あらず、さけの みだれを なさず。なんぞ われに あらんや。」 (意味)出でて朝廷にあっては、爵位の尊い者につかえて誠を尽くし、入って家庭にあっては父兄につかえて孝をつくし、父母の喪には哀しみを尽くし礼を尽くすことを勉めないことはなく、酒を飲んでも行儀を失って乱れることがない。この4つについて、私はどれひとつできていないのである。 読み方「し せんじょうに ありて いわく、ゆく ものは かくの ごときか。ちゅうやを すてず。」 (意味)孔子が川のほとりにいて言われるには、天地の間の変化が窮まりないのは、この川の水のようなものであろうか。昼夜休むことがない、と。 読み方「われ いまだ とくを このむ こと いろを このむが ごとき ものを みず。」 (意味)私はまだ徳を好むことが美色を好むのと同等な者を見たことがない。 |