「里は仁を美となす。択んで仁に処らずんば、焉んぞ知とするを得ん。」
読み方「りは じんを びと なす。えらんで じんに おらずんば、いづくんぞ ちと するを えん。」
(意味)住む里は思いやりの深いところを美しいとする。思いやりのある里を択んで住まないなら、どうして智者と言えようか。」
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働く場所も択ぶべきである。
思いやりのある経営者や社員達であることを見抜く必要がある。
短い面接であっても、自分も会社を択んでいることを忘れてはならない。択ばれると同時に択ぶのだ。
「不仁者は以て久しく約に処るべからず。以て長く楽に処るべからず。」
読み方「ふじんしゃは もって ひさしく やくに おる べからず。もって ながくらくに おる べからず。」
(意味)不仁者には人を思いやる気持ちが薄いので、久しく貧乏な状態にあってはいけない。悪事を起こしがちになる。長く富貴な状態であってもいけない。驕り高ぶる。
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貧乏なとき、富んだときに、心の状態をチェックしよう。
価値判断基準がお金に偏っていると、必ず精神がおかしくなる。
お金があっても無くても、人を思いやる心を忘れなければ、お金を持つ資格があるといえる。
「仁者は仁に安んじ、知者は仁を利す。」
読み方「じんしゃは じんに やすんじ、ちしゃは じんを りす。」
(意味)仁者は仁が体に染み込んでいるから自然にしていて仁に違わず、知者は仁を得ようと努力するので長く貧乏や富貴な状態にあっても大丈夫である。
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仁が体に染み込んでいれば、追い詰められても判断を誤らない。
大枚が手に入っても、心が狂うことは無い。
また、仁を身に付けようと努力しているものも、判断に間違いが無い。要は、仁を求めることが大切なのだ。
「唯仁者のみ能く人を好み、能く人を悪む。」
読み方「ただ じんしゃ のみ よく ひとを このみ、よく ひとを にくむ。」
(意味)仁者は徳に基づいた基準がしっかりしているので、正しく人を好み、人を悪むことができる。
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仁者には、個人的な好き嫌いが無い。
社会的な道理に基づいての好き嫌いであり、好む者を伸ばし悪む者を抑制すれば、社会のためになるのだ。
例えば部下やお客と接するにあたって、私的感情で接していないか反省してみよう。
「苟に仁に志せば悪なし。」
読み方「まことに じんに こころざせば あく なし。」
(意味)心が本当に仁を行おうと志すならば、悪を行うということはない。
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魔がさすということがある。
しかしこれは、心が仁の方向に向かっていなかった証拠である。
上司の命令でも、酒に酔ったときでも、心が仁に向かっていれば悪を行うことは無い。
「富と貴とは是人の欲する所なり。その道を以てせずして之を得れば処らざるなり。」
読み方「ふと きとは これ ひとの ほっする ところ なり。その みちを もって せずして これを うれば おらざるなり。」
(意味)富貴は人が欲しいと思うものだが、富貴を得るための善い行いをせずしてこれを得るなら、その富貴を捨てる。
→ 行いの結果であれば甘んじて受けるが、そうでない富貴は自分を狂わすもとである。
努力の結果として善い待遇を得ることこそ、世の中の秩序に合う。
例えば宝くじは庶民の夢だが、君子は受けたりしない。それが人生の目的ではないのだから。
「貧と賤とは是人の悪む所なり。その道を以てせずして之を得れば去らざるなり。」
読み方「ひんと せんとは これ ひとの にくむ ところ なり。その みちを もって
せずして これを うれば さらざるなり。」
(意味)貧と賤は人が嫌うものだが、貧と賤を得るような悪の行いをせずしてこれを得るなら、その貧と賤を去らない。
→ 行いの結果であれば反省して貧乏や低い地位を脱することができるよう努力する。
しかし、悪いこともしていないのにそのような境遇に置かれたら、これは天の配慮である。
心の仁を失わないようにしつつ、その境遇を甘んじて受けよう。
「君子は終食の間も仁に違うことなし。」
読み方「くんしは しゅうしょくの あいだも じんに たがう こと なし。」
(意味)君子は、ご飯を食べ終わるまでの短い間も、仁の徳に基づいた振る舞いをしないことはない。
→ 「ほんの少しなら、悪いことをしてもいいだろう」とつい考えがちである。
しかし、君子のレベルになると、どんなときも自分の心の誠に基づいて行動する。
「この行動を天が喜ぶか否か」が判断基準と考えたらよい。どんなときでも。
「我は未だ仁を好む者不仁を悪む者を見ず。」
読み方「われは いまだ じんを このむ もの ふじんを にくむ ものを みず。」
(意味)私はいまだに仁を好む者や不仁をにくむ者のような、徳の高い人を見たことが無い。
→ 本当に思いやりの心をもった人というのは、非常に少ない。
「自分は人を思いやる心が十分ある」と思っている人は、まず思いやりが不足していると見て間違いない。
「思いやり」には完璧が無い。どんなに思っても足りないのが「思いやり」の心である。
「能く一日其の力を仁に用うるあらんか、我は未だ力の足らざる者を見ず。」
読み方「よく いちにち その ちからを じんに もちうる あらんか、われは いまだ
ちからの たらざる ものを みず。」
(意味)いったん奮起して力を仁に用いる者があるならば、私はいまだに力が足りない者を見たことが無い。
→ 仁を実践することは、かならい難易度が高い。
しかし、仁を行おうと心に決めるのは、たやすいことである。
心に思ったことが現実化する。まずは、仁を徹底的に意識することだ。
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