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エピソード集

「孫子の兵法」を駆使したと思われる兵法家のエピソード5

趙括「生兵法は大怪我のもと」


●趙括の「生兵法は大怪我のもと」

机上の兵法を実戦で使い、大失敗すること。

【登場人物】

趙(ちょう):将軍 趙括(ちょうかつ)、名将 趙奢(ちょうしゃ)、  
       将軍 R
秦(しん):将軍 白起(はくき)



趙の国に名将、趙奢がいた。

その息子、趙括は幼少時から兵法を学び、
軍事においては自分が天下第一と考えていた。

かつて、趙奢が趙括と兵法について論じ合った際、
趙奢は息子をやりこめることができず、
かえって旗色が悪くなっても、
息子の意見を善しとはしなかった。

趙括の母がその理由を尋ねると、趙奢はこう答えた。

「戦争は死地、つまり命がけの場である。
 しかるに趙括はこの重さを分かっていない。
 口先で論じている。

 趙括を将軍にしないで済めばそれでよいが、
 もし将軍にすれば、かならず趙の軍を壊滅させてしまう
 だろう」

趙奢の亡き後、趙はRを将軍としていた。

敵対していた秦軍がいくら戦いを挑んでもRは乗ってこない。
そこで秦は間者(スパイ)を送り込み、趙王にこう伝えさせた。

「秦が恐れているのは、
 趙奢の子、趙括が将軍となることです」

王はこの言葉を信じ、将軍をRから趙括に代えようとした。
別の将軍がこれに反対した。

「たしかに趙括は父の兵法を受け継いだことで有名です。
 しかし、それは学問上のことであって、
 実戦において臨機応変の指揮が出来るとはいえません」

しかし、趙王は聞き入れず、趙括を将軍にとりたてた。

これを聞いた秦の側は極秘裏に白起を総司令官に任じ、
趙軍の出方を待った。

趙括の出陣が迫ると、その母が書をしたため、王に上書した。

「趙括に将軍は務まりません。どうか、ご再考ください」

王がその理由を尋ねると、母はこう答えた。

「私は趙奢の妻でした。かつて夫が将軍であったとき、
 おごり高ぶることはいっさいなく、
 みずから数十人の部下をねぎらい、
 数百人の友と親しんだものです。

 王様からいただいた恩賞はみな部下に分け与え、
 出陣の命令を受けた後は家事をかえりみませんでした。

 これに対してせがれは将軍を拝命して、
 整列した軍隊を見回った際、
 ただ威張ることしかしなかったと聞きます。

 拝領した金品のたぐいはみな自分でしまいこみ、
 土地家屋を買いあさる始末。

 こんな息子がどうして父のあとを継げましょうか。
 どうかお役を免じて頂きたく存じます」

「もう決定したことじゃ。いまさら変更するわけにいかぬ」

「どうしても息子を将軍にするとおっしゃいますなら、
 万が一、失敗するようなことがありましても、
 どうか私にはお咎めのないように願います」

王はこの願いを受け入れた。

趙括はR将軍と交代すると、さっそく軍律をすべて変更し、
大幅な人事異動を行った。

これを聞いた秦の将軍白起は、さっそく奇計を用いた。

敵を偽って敗走し、趙軍をおびき出しておいて、
その補給路を遮断したのだ。

趙軍はふたつに分断されてしまったため、
士卒の趙括への不信感はつのった。

それから40余日が過ぎ、趙軍は飢え始めた。
食糧が尽きたのだ。

趙括は鋭卒を率いて自ら突撃したが、
秦軍によって射殺された。

趙括の本隊が敗れたため、
残る数十万の趙軍は戦意を失い、
ついに降伏したのである。

しかし趙王は約束に従い、
趙括の母親を罰することはしなかった。


※敗戦を招くことは重罪であり、将軍のみでなく一族の者が
  みな罰せられたので、趙括の母は自分を罰しないように
  求めたわけですが、名将であった趙奢の言葉を
  直接聞いた妻として、王の命令を覆すことが
  第一の目的だったのでしょう。

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