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 「孫子」学習法の研究: どうすれば「孫子」を使えるようになるのか?
「孫 子 の 兵 法」と 戦 っ た 日 々
~ある経営コンサルタントの実践記録~
「孫子」に10年かけるか、40日でマスターするか。決めるのはあなた自身。

 第五回 西洋流ノウハウの問題


1997年、私は中小企業診断士試験に合格しました。

この年の1月に経営コンサルタントとして事務所を開いた
私でしたが、独立直後に営業で訪問したある会社の社長から、

「濱本さんも中小企業診断士くらい取った方がいいんじゃない?」

「どこの馬の骨とも分からない人にコンサルティングなど
 頼まないよ」

と言われ、ちょっと小馬鹿にされた感じを受けた
(被害妄想かもしれませんが)
私は奮起して猛勉強。

その結果、診断士の一次試験、二次試験を運よく突破し、
この国家資格を手に入れたのです。

中小企業診断士の経営診断というのは、

・極めて基本に忠実

です。

経営戦略、生産、販売、人事、財務などについて、
データを調べ、インタビューをし、
問題と原因を洗い出して対策を立案します。

これは日本の国家資格ではありますが、
大本はドラッカーやコトラー、デミングなどの
西欧の考え方、手法にもとづいています。

民間のコンサルタント会社も、それぞれのノウハウを

・独自の手法

と言っていますが、やっぱり元は西欧にあります。

その基本的考え方は、

・起こっている問題そのものを効率よく解決する

というもの。

西洋医学を例にとって説明してみましょう。

西洋医学では、患者がある症状を訴えると、
いろいろ調べて、

「原因は食中毒です。この薬で治ります」

といった具合に医者が診断します。

これで治れば万々歳です。ノープロブレム。

ところが、往々にして、

「原因不明。うちでは分かりません」

という事態に立ち至ります。

患者は他の病院で新たに診断を受けざるを得ません。
ひどい場合はいくつもの病院を巡り巡って、
それでも治らないことがあります。

企業経営においても、同じようなことは起こるのです。

中小企業診断士や経営コンサルタントがいろいろと調べて、
ひとつの仕組みをその企業に提案、導入します。

例えば、

「社員がどんどん辞めていく」

という事象が起こっているとして、

「原因は社内に蔓延している不平等、不公平感にある」

と人事制度を提案します。

ところが、やってみても何も改善しないどころか、
書類作成の業務がどんどん増えて、
帰属意識の高かった社員まで音を上げる、

などという事態に陥ります。

企業側は、

「先生、残念ながら成果が上がりませんでした。
 うちの社員がバカだからでしょうね」

などと言って診断士やコンサルタントを追い払い、
また別の先生を招き入れます。
原因不明の病気であちこちの病院を巡る患者の如く。

診断士や一般の経営コンサルタントが用いている、

・西洋発祥の思考法、ノウハウ

ではなかなか解決できない、ということが起こりうるのです。

特に最近は、

・決め打ちのコンサルティング

が横行しています。

コンサルタントの得意なコンサルティングメニューを
クライアントにあてはめるやり方です。

コンサルタントは仕事をとりたいから、

「大丈夫、このやり方で成果が出ます!」

と太鼓判を押しますが、実際にはそうならないことも少なくありません。

そんなとき、他の手法を知らないそのコンサルタントには
お手上げとなってしまいます。


つい先日、中小企業診断士の勉強会に参加して驚いたことがありました。

中小企業庁が野村総研に委託して行った、

「中小企業の成長に向けた事業戦略等に関する調査」(2016年11月」

というレポートの一部が示されたのですが、その中の、

「新事業展開の成否別に見た、主な相談相手」

の5番めに、

・マーケティング会社・コンサルタント

が挙げてあり、

・彼らに相談して成功した企業は13.6%、

・相談したが成功しなかった企業は14.0%

と書いてあったのです。

これだけ見ても「成功しなかった」方の数字が大きいので
ぎょっとしましたが、実は、それぞれの分母が大きく異なっており、

・成功した企業:242社
・成功していない企業:559社

だったのです。成功していない方がはるかに多い!

先ほどのパーセンテージを掛け合わせると、

・成功した企業242社×13.6%=約33社
・成功していない企業559社×14.0%=約78社

となります。

つまり、コンサルタントに相談した企業の約7割が、

「成功しなかった」

と言っていることになるではありませんか。

「新事業展開」に限っての調査結果ではありますが、
この数字を見て恐ろしくなるコンサルタントは
私だけではないでしょう。

世の中には、

・コンサルタントに対する不満が渦巻いている

と考えてよいのではないかと思います。


では、東洋医学の場合はどうでしょうか?

目次 第六回へ続く

 

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