おそらくですが、世の多くの「孫子」解説者は、
・「孫子」の素読(そどく)
などやってないでしょう。
素読とは、意味を考えず、ひたすら読む学習法で、
頭ではなく体に覚えさせる効果があるものです。
古来、日本の上層階級は、
この学習法で中国古典を自分の血肉に変えてきました。
現代人でもなじみが深いものに、
お坊さんが読むお経があります。
漢文を音読みしている場合が多く、 聞いてもさっぱりわかりません。
しかし、音読みだとリズムが心地よくて、 いつの間にか体に入り易いのです。
最もポピュラーなのは般若心経。
「マーカーハンニャーハーラーミーター」
と、暗唱できる人がとても多いですね。
「孫子の兵法」も音読みすると体に染み込みやすいのです。
「どんな漢字が使ってあったか」 「ある部分が全体のうちのどこに書いてあったか」
などを自分の記憶から探すには、音読みが適しています。
これに対して、漢字かなまじりの書き下し文は、そもそもが、
・和訳
です。
江戸時代以前の日本人が使っていた言葉に 漢文を訳したものなのです。
だから、書き下し文を素読すると、 リズムは音読みに劣りますが意味は分かり易くなります。
例えば、
「兵者国之大事也」
音読み:ヘイシャコクシダイジヤ ↓
書き下し文:へいとはくにのだいじなり
となるわけです。
私は長らく「孫子」をこの両方の読み方で素読していました。 おかげで、始めて半年ほどで、
・全体像
をつかめるようになりました。
逆にいうと、素読をしていなかったら、 全体像もつかめなかったわけです。
※今は音読みはやめています。 両方やっているとそれだけでやたらと時間がかかるので。
全体像がつかめると、
・「孫子」の体系
が分かってきます。
ただ、ここらあたりまでは、
・苦しいばかり
です。
意味の分からないものを読むのはなかなかつらいもの。
「こんなことをして何になるのか」
とも思えてきます。
しかし、少し分かり始めると楽しくなるのは、
どんな習い事も同じです。
それぞれの篇(へん)のつながりや、 一見、矛盾してみえる文言がそうでないことなど、
「孫子」理解に欠かせない点が見えてくると、 自分の進歩が感じられてうれしいものです。
「孫子の兵法」は体系の理解が欠かせません。
ちなみに、体系がわかっていない「孫子」解説本の著者はとても多いです。
ぜひ気を付けて下さい。
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